SNS採用とは?メリットや費用から具体的なやり方まで解説
- 投稿日 2025.05.02
- 最終更新日 2025.05.07

SNSは個人の情報発信がメインであり、採用活動に役立つイメージがないという方も多いかもしれません。しかし求職者の意識や採用市場の変化から、SNSが従来の求人広告に代わって採用活動を活性化させるツールとして注目を集めています。
この記事では、SNS採用で使われるSNSの種類や特徴から、メリットやデメリット、費用まで幅広く解説します。実際のやり方や注意点も紹介するので、ぜひ導入の参考にしてみてください。
SNS採用とは?
SNS採用とはSNSを利用した採用活動で、ソーシャルリクルーティングとも呼ばれます。
求職者に直接アプローチできるため、ダイレクトリクルーティングの手段のひとつとして使われることもあります。
SNS採用が注目される理由
SNS採用に注目が集まる背景として、以下の3つの理由が挙げられます。
- 転職市場の人材不足
- カルチャーマッチを重視した就活、転職への意識の変化
- SNS利用者数の増加
1つ目の理由は、人材不足です。求人サイトは転職活動を積極的に行う顕在層がメインですが、顕在層にアプローチするだけでは採用を確保できない企業も少なくありません。
SNSは顕在層以外の潜在層も利用しているため、より広い範囲から人材を見つけることが可能です。
2つ目は仕事探しへの意識の変化です。この傾向は20代など若い層で特に顕著で、待遇やスキルマッチよりも、社風や職場の雰囲気といった「カルチャーフィット」を重視する人が増えてきました。SNSはそういった視覚化しにくい情報を伝えやすいツールであり、最近の求職者の志向と相性が良いといえるでしょう。
3つ目はSNSの利用者数自体の増加です。日本国内でSNSを利用する人は1億580万人に達しており、総人口の約85%にのぼります。
出典:総務省「令和6年版情報通信白書(PDF版)」
SNSでは、求人サイトで検索するよりも手間なく求人情報を得ることができます。年齢を問わず利用が広がるSNSは、若年層からシニア層まであらゆる年代の採用に活用できるでしょう。
SNS採用のメリット
SNS採用には、従来の求人サイトや求人広告とは違ったメリットがあります。うまく活用すれば、人材確保が難しい状況の中でも自社に合う人との出会いにつながるでしょう。
企業規模にかかわらずブランディングができる
SNSで自社の投稿を「バズらせ」ることができれば、従来リーチが難しかった層へも認知を一気に広められます。SNSでは個人同士の繋がりによって情報が拡散されるので、情報の拡散スピードは企業規模の大小を問いません。
また広告では打ち出しにくいカジュアルな投稿は企業への親近感を生み出し、自社の「ファン」を増やします。ファンの増加は売上に寄与するだけでなく、採用においては選考辞退を減らし、歩留率の向上にもつながるでしょう。
潜在層へアプローチできる
SNSを利用しているのは、転職活動をしている人だけではありません。「条件が良ければ」「機会があれば」と考えている人も、転職活動とは無関係に利用しています。また現在転職を考えていなかっとしても、転職についてポジティブな考えを持つ人は少なくありません。
そういった層が転職活動を始めるときに、企業に対して良いイメージを持っていれば転職候補先として考えてもらえる可能性が高まります。名前を見たことがあるというだけでも、スカウトメールや求人広告が目に留まるきっかけになるでしょう。
採用費用を抑えられる
SNSのアカウントは、基本的に無料で利用できます。そのため資金力のない企業でも、手軽に始められます。
また広告出稿など優良オプションを利用しなければ、採用までまったく費用をかけずに活動をすすめることもできます。求人サイトのように利用期間に応じた掲載料金が発生したり、成功報酬が請求されたりすることもありません。
求職者と直接やり取りができる
SNSは企業アカウントでも個人と直接やりとりできます。そのため求職者とも、リアルタイムな双方向コミュニケーションが可能です。
どのくらい交流するかは企業ごとの運用方針によりますが、個別の質問に答えたりアンケートをとったりと活用方法は自由。匿名で利用している求職者も多く、選考とは違う忌憚のないやりとりはただ情報を得るだけでなく、親近感の醸成にもつながります。
SNS採用のデメリット
SNS採用にはメリットだけではなくデメリットも存在します。デメリットを理解して導入しないと効果がでないだけでなく、トラブルにもつながりかねません。
効果が出るまで時間がかかる
SNS採用は、求人サイトや人材紹介に比べると効果を実感できるまで時間がかかります。アカウントの運用を始めてすぐに応募が増えたり、採用が決まったりするものではありません。
また最初から大量のフォロワーを獲得するのは難しく、地道に投稿を続けて自社アカウントを知ってもらうところから始める必要があります。
企業イメージ低下のリスクがある
SNSでは良い情報だけでなく、悪い情報も一気に拡散します。投稿自体を削除したり、謝罪や反論を行ったりしても、一度ついたマイナスイメージを完全に払拭するのはほぼ不可能です。
このようないわゆる「炎上」が起きると、たとえ時間が経っても何かのきっかけで再び話題にのぼってしまうこともあります。求職者である個人と距離が近いぶん、悪い影響も大きくなってしまう点は注意が必要です。
ノウハウを持つ人材が少ない
SNS採用をはじめダイレクトリクルーティングは、近年注目され始めた採用活動です。そのため人事担当者でも蓄積されたノウハウを持つ人材は多くはありません。
また求職者ひとりひとりに合わせた対応をするため、ある人に効果があったアプローチ方法が別の人にはまったく効果がないということも十分にあり得ます。SNSごとに利用者層や適した運用方針が異なることも、ノウハウが溜まりにくい原因といえるでしょう。
このような状況で試行錯誤を繰り返してもなかなか効果が出ず、担当者が疲弊してしまう可能性があります。採用コンサルタントなど、採用市場全体に詳しい専門家のサポートを受けることがおすすめです。
採用活動に活用できるSNSの特徴と活用方法
ひとくちにSNSといっても、利用者層や特徴はさまざまです。主要なSNSについて、採用活動への活用方法も含めて一覧表で紹介します。
SNS | 利用者年代 | 特徴 | 採用への活用方法 | 求人広告枠 |
---|---|---|---|---|
X(旧Twitter) | 10〜30代 | 短文投稿(原則)拡散力が高いトレンドの変化が早い | 社内イベントや日常風景の発信によるファンの獲得認知度向上 | × |
10〜40代 | 写真や動画に特化拡散力は低い | ビジュアル面でのブランディング | × | |
30〜50代 | 拡散力が高いビジネスでの利用も多い | 求人広告掲載採用イベント告知やコミュニティの形成 | ◯ | |
LINE | 全世代 | 個別のメッセージのやりとりが簡単にできる20代では99%以上が利用 | 求人情報の個別配信選考日程調整など採用活動の効率化 | ◯ |
YouTube | 全世代 | 動画に特化比較的長めの動画コンテンツに向いている | 社内イベントや従業員インタビューなどの配信による、応募意欲アップにつながる情報発信 | × |
TikTok | 10〜20代 | ショート動画に特化拡散力が高いトレンドの移り変わりが早い | 社内イベントやダンス動画などの発信による話題づくり | × |
Wantedly | 10〜30代 | ビジネス特化型SNSポートフォリオとして活用する個人も多い | 求人広告掲載社風やビジョンの紹介社員インタビューなど応募意欲につながる情報発信 | ◯ |
利用者年代出典:総務省情報通信政策研究所「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
もっとも利用者が多いのがLINEで、ほとんどの年代で90%以上が利用しています。利用者同士の拡散力は低いものの、個人にダイレクトにアプローチが可能です。
X(旧Twitter)とFacebookはほぼ同時期にサービスを開始したSNSですが、利用者の年代はFacebookのほうがやや高めです。Xのほうが拡散力が高く、認知度向上やファン拡大に向いています。いっぽうFacebookは有料の求人広告枠があり、スピーディな採用活動が可能です。
YouTubeとTikTokはともに動画配信に特化したSNSです。YouTubeが比較的長い動画コンテンツの配信であるのに対し、TikTokは数十秒程度が主流です。
Wantedlyはビジネス特化型SNSで、キャリアポートフォリオとして利用している個人も多く登録しています。
またいずれのSNSも有料広告枠がありますが、求人専用の枠として設けているのは一部です。
SNS採用の費用
SNSはアカウント作成が無料で、広告出稿の際に費用がかかるケースが一般的です。主要なSNSと費用の目安を表で紹介します。
SNS | アカウント作成 | 有料広告枠費用 | 課金形態 |
---|---|---|---|
X(旧Twitter) | 無料 | 自由に設定可能(入札制) | クリック課金フォロー課金 など複数 |
無料 | 自由に設定可能(入札制) | クリック課金再生課金 など複数 | |
無料 | 自由に設定可能(入札制) | 表示課金クリック課金 | |
LINE | 無料 | 自由に設定可能(入札制) | クリック課金インプレッション課金友だち追加ごとに課金 |
YouTube | 無料 | 自由に設定可能(入札制) | 表示課金クリック課金再生課金 |
TikTok | 無料 | 自由に設定可能(入札制) | クリック課金再生課金 など複数 |
Wantedly | 無料 | 5万円/月〜 | 掲載課金 |
SNSの広告は多くが成果課金型ですが、課金形態は複数用意されています。また単価も自由度が高く、表示課金であれば数十円程度から設定可能です。
単価は予算に応じて設定できますが、入札制なのでより高い単価を設定するほど露出を増やすことができます。
SNS採用の導入ステップ
SNS採用を導入する際は、事前準備が重要です。以下に具体的な導入ステップを解説します。
- SNS活用の目的とアプローチしたい人物像を明確にする
- 目的と人物像に合致するSNSを選ぶ
- 運用方針を決める
SNSは採用の確保以外に、認知度の向上などブランディングでも効果を発揮します。そのためSNS採用では、「採用」以外を目的として導入しても良いでしょう。
ただしあくまで最終目標は採用です。たとえば目的が認知度向上であったとしても、ターゲットには「採用したい人物像」を想定しておくことが重要です。目的と人物像を明確にしたら、それらに合致するSNSを選択します。
またSNSの運用方針も、運用を始める前に可能な限り決めておきましょう。必ず決めておきたいのは以下の3つです。
- 広告予算をどれだけ使うか
- トンマナのルールを作る
- 運用メンバーへのルールと運用ガイドラインの周知
トンマナとは「トーン」と「マナー」のことで、文章や画像のルールです。たとえば、「です・ます」調なのか「である」調なのか、といった取り決めもトンマナに該当します。
トンマナのルールは目的と採用ターゲットに合わせて決めましょう。認知度向上を目的とするなら拡散を狙ってトレンドに合わせる運用になりますし、応募意欲の向上であれば自社の福利厚生や職場の雰囲気を発信していきます。
運用メンバーへのルールの周知は、トラブル防止の面でも重要です。トンマナのルールだけでなく、SNSでやってはいけないこと(ガイドライン)をしっかりと共有しておきましょう。ガイドラインの具体例は後述します。
SNS採用成功のポイント
SNS採用を成功させるためのポイントを3つ紹介します。
会社全体の協力を得る
SNS採用では、求人サイトでは得られないような、現場の雰囲気やリアルタイムの情報に価値があります。インタビューや業務風景、社内イベントの様子など、会社全体に協力を仰ぎながら情報を発信しましょう。
またSNSの種類に応じて、社員参加型の企画を発信することも効果的です。たとえばTikTokでは、流行っているダンスを踊って拡散を狙うこともあります。
継続的に発信する
SNSでは情報が常に流れていきます。埋もれないためには、新しい情報を継続して投稿することが重要です。
特にXでは、ほぼ毎日投稿するくらいでも良いでしょう。大きなイベントのときに大々的に投稿するよりも、世間話や天気の話題などでも良いので、毎日こつこつ運用することが成果につながります。
デメリットでも触れた通り、SNS採用はすぐに効果が現れるものではありません。しかし何度も社名や投稿を目にしてもらうことでフォロワーが増え、顧客や求職者の獲得につながります。将来的、継続的な応募効果の向上を目指すものとして運用しましょう。
ガイドラインを遵守する
SNSではそのときどきのトレンドや時事ネタを上手に盛り込むことで、目に留まりやすくなります。しかしスピードにこだわるあまり、ガイドラインを逸脱してしまうことのないように注意しましょう。
ガイドラインの例
- 運用者個人の発信は控える
- 他社を貶める発信はしない
- 政治や宗教に関わる話題は慎重に内容を検討する
- 差別的な投稿はしない
運用者の個人的な発信は、うまくいけば距離感を縮め、ファンの獲得につながります。しかし度が過ぎてしまうと、会社アカウントの私的利用というマイナスイメージになってしまう危険も。
また運用者個人の差別意識がそのまま投稿に反映されたことで、炎上や謝罪に追い込まれた事例も少なくありません。SNS採用のカジュアルさは活かしつつ、守るべきところは守って運用しましょう。
SNS採用の成功事例
最後にSNS採用の成功事例を紹介します。いずれの企業も、利用するSNSの特徴やターゲット層をうまく掴んだ運用で、フォロワーを獲得しています。
トランスコスモス株式会社(Facebook)
人材派遣を行うトランスコスモス株式会社では、Facebookを使ってリファラル採用の窓口を設けています。普段の投稿は自社の新しいサービスやカンファレンスの案内ですが、フォロワー数は5,000人を超えています(2024年10月時点)。
リファラル採用は友人や知人の紹介による採用で、ミスマッチが少ないという利点があります。「実名で登録」「友人やビジネスパートナーと繋がる人が多い」という、Facebookの特徴をうまく活かしたSNS採用といえるでしょう。
三陽工業株式会社(TikTok)
三陽工業株式会社は金属部品加工と人材派遣を行なっている会社です。部長や監査役など社内の3名の「おじさん」が踊る動画が話題となり、1年間で約6万人のフォロワーを集めました。
TikTokは若い世代の利用者が多く、同社でも20代、30代の採用を強化するためにアカウントを開設しました。がんばってダンスに挑戦する姿が「かわいい」と評判になっただけでなく、動画内での広報グループとのやりとりも「風通しの良さ」を伝える要素となっているようです。
パタゴニア(Instagram)
パタゴニアはアウトドア商品を展開する企業で、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」をいうメッセージを掲げています。
Instagramの公式アカウントではこのメッセージに合わせて、世界中の美しい風景や気候変動問題へのアクションを紹介。SDGsに関心のある求職者など、26万人以上のフォロワーを獲得しています(2024年10月現在)。
まとめ
SNS採用はSNSによる企業のイメージアップを通じて、将来的な採用戦略に効果を発揮する手法です。しかしすぐには効果が現れにくいため、成功させるには長期的な視点と適切な運用を行うノウハウが必要です。
もしターゲットに合わせたSNS選びや運用方針に迷う場合は、お気軽にkaiketsuへご相談ください。採用市場のトレンドを熟知した担当者が、貴社のSNS採用をサポートします。